ソムリエ二次試験、香りのコメント、特徴(白)
テイスティング・コメントの中で一番難しいところです。どのような香りがするかを何かワイン以外の物に例えて表現します。ソムリエ、ワインエキスパート二次試験では、2項目に分けて回答します。
項目毎に多数の選択肢があり、その中から複数個選択します。選択できる個数はワイン毎に決められていて、解答用紙に指示されています。白ワインの場合は下記の個数が指示されることが多いようです。
- 果実・花・植物: 2〜6個(2020年は白は全て4個)
- 香辛料・芳香・化学物質: 2〜4個(2020年は白は全て4個)
白ワインと赤ワインとでは香りが異なりますので、白ワインから項目別に説明しましょう。果実、花、植物は同じグループにまとめられていますが、個数が多いので別々に考えた方が分かりやすくなります。
1. 果実(白)
果実の香りは、ワインの香りの基本となるものです。一般には、フレッシュ、加熱加工(ジャム)、ドライフルーツと区別して表現しますが、ソムリエ、ワインエキスパート二次試験では区別せず、下記のような用語で表現します。
度合い | 二次試験で使われる用語 | 良く適合する品種 |
---|---|---|
1 柑橘系 | 柑橘類 | リースリング、ミュスカデ、甲州 |
2 小種系 | 青リンゴ リンゴ 洋ナシ マスカット | ソーヴィニョン・ブラン、シャルドネ(寒冷地)、シュナン・ブラン |
3 核種系 | 花梨 白桃 アプリコット | シャルドネ(温暖地)、セミヨン |
4 熱帯系 | パイナップル パッションフルーツ ライチ | ヴィオニエ、ゲヴュルツトラミネール、ミュスカ |
「小種系」というのは種が小さい果実、「核種系」とは種が大きい果実のことです。「核種系」の方が甘い香りを表現します。
「柑橘類」という用語は、以前の試験では「ライム」「レモン」「グレープフルーツ」と3つに分けられていました。
度合いは、まずブドウ品種によって度合い1〜4のどこに属するかがだいたい決まります。そして同じ品種でも、寒冷な産地のものは度合いがより低くなり、逆に温暖な産地のものは度合いがより高くなります。
また、下記のように特定の品種と強く結びついた香りもあります。
- シャルドネと「白桃」
- ミュスカと「マスカット」
- ゲヴュルツトラミネールと「ライチ」
2. 花、植物、ナッツ(白)
花の香りは、一般にワインの若々しさを表します。また植物の香りは、一般にブドウの成熟度合いを表します。ソムリエ、ワインエキスパート二次試験では下記のような用語で表現します。
種類 | 二次試験で使われる用語 |
---|---|
花 | すいかずら アカシア 白バラ キンモクセイ 菩提樹 |
植物 | ミント タイム アニス ヴェルヴェーヌ 草のような |
ナッツ | アーモンド ヘーゼルナッツ |
「すいかずら」は、ふんわりとしたわずかに甘い花の香りです。「アカシア」は、はっきりとした甘い香りでアカシアの蜂蜜の中にも感じられます。どちらも若い白ワインに辛口甘口を問わず非常に良く感じられ、定番の表現として用いられます。また「菩提樹」は多くのソムリエがリースリングの香りの表現に用います。
「ミント」と「ヴェルヴェーヌ」はハーブティの香りと考えると分かりやすいと思います。「ヴェルヴェーヌ」は「レモンバーベナ」という名前でハーブティが売られています。ソーヴィニョン・ブランの香りの表現に用いられます。
「ヘーゼルナッツ」は「ノワゼット」とも言い、「アーモンド」と並んでシャルドネの香りの表現に用いられます。
3. 香辛料・芳香・化学物質(白)
白ワインの香辛料・芳香・化学物質の香りは、ソムリエ、ワインエキスパート二次試験では下記のような用語で表現します。
種類 | 二次試験で使われる用語 |
---|---|
ミネラル香 | 貝殻 石灰 火打石 鉱物 海の香り |
樽香 | トースト ヴァニラ |
スパイス香 | コリアンダー 白胡椒 丁字 香木 ジンジャーブレッド |
その他 | 硫黄 ペトロール(ケロセン) パン・ド・ミー ハチミツ 乳製品 フェノール 麝香(じゃこう) |
ミネラル香
ミネラル香は説明が難しい香りですので、ミネラル香とは? をごらんください。フランスのワイン雑誌からの引用です。「貝殻」「石灰」は、品種を問わずフレッシュで生き生きとした白ワインのミネラル香を表現するときに良く用いられます。「火打石」も同様の香りですが花火が燃焼したときのような香りとして感じられます。
「海の香り」もミネラル香の一種で、海藻や牡蠣の香りです。甲州、シャブリ、ミュスカデに良く感じられます。
樽香
「トースト」は「パン・グリエ」とも言い、焦げたパンの香りです。新樽熟成のシャルドネや少し古いシャンパーニュに感じられます。「ヴァニラ」は、新樽熟成に由来するヴァニリンという成分の甘い香りです。
なお、弱い樽香は「アニス」(植物のところに選択肢があります)と「シナモン」を使って表現することもあります。
スパイス香
「コリアンダー」は、エスニック料理に入れられるコリアンダーシードというスパイスで、甘く爽やかな柑橘系の香りがします。「香木」は、沈香や白檀など心地よい芳香を持つ木材の香りです。「コリアンダー」と「香木」は、リースリングやソーヴィニョン・ブランのハーブ香を表現するときに用いられます。
「ジンジャーブレッド」とはショウガとシナモンの香りがするビスケットと考えてください。澱とともに熟成させたシャンパーニュのビスケット香を表現します。
その他
「硫黄」という物質自体には香りはありませんが、これは硫化水素、つまり、ゆで卵、温泉の臭いを表します。ワインが還元状態に置かれたときに出てくる還元臭という臭いです。良好なビン内熟成のサインですが、強いと不快に感じられます。
「ペトロール(ケロセン)」とはTDNという物質の香りで、灯油のように感じられます。一部のリースリングに感じられる石油香を表します。
「パン・ド・ミー」とはフランス語で食パンです。これは食パンの真ん中に感じられるイースト香を表します。甲州やミュスカデなどシュル・リー製法由来の香りを表現するときに用いられます。
「ハチミツ」は花から採集しますので、花の香りと蜜蝋の香りが合わさって感じられます。甘口ワインに良く感じられますが、辛口ワインに感じられた場合は、色が濃くやや酸化気味の重い味わいのワインであることが多いようです。
「乳製品」とはジアセチルという物質の香りで、発酵バターに強く感じられます。ワインのマロラクティック発酵中に生成する香りです。一部のこってり系のシャルドネに感じられます。
白ワインの「フェノール」とは、ゴムの臭いとカーネーションの匂いが混ざったものと考えてください。現在ではオフフレーバーと考えられていますので試験では用いない方が良いと思います。
「麝香」(じゃこう)とは、香水の世界では動物性ノートに分類されている香りで、動物園の獣舎の臭いとも言われています。ワインの世界では、えも言われぬ妖艶な香りを表現しますが、試験では用いない方が良いと思います。