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山崎和夫の旅日記・奄美大島編-3

この日、夜は富田さんと名瀬の居酒屋に飲みに行くことになりました。

一旦キャンプ場に戻り、バイクを置いてあらためてバスで街に出直します。私は元々飲酒運転が嫌いなので、昔から飲みに行く時はもちろんの事、酒蔵を訪問する時もバイクの時は試飲は遠慮します。試飲したい時は、バイクを置いて出直すのです。

名瀬には「一村」という素敵な居酒屋があります。私は日本全国の居酒屋を巡っていますが、ここは相当レベルが高いと思う店です。店名は孤高の画家田中一村に由来し、名瀬の飲み屋街の一番奥に位置する静かなお店です。名瀬は港町。もちろんお魚がおいしいのですが、磯の香りたっぷりのアオサの天ぷらが私のお気に入りです。最初にビールで乾杯してから、小さなカメからくみ出してくれる龍宮を飲み進みます。フランスでも日本でも、その土地の料理にはその土地の酒を合わせるのが一番おいしい。旅の幸せを感じる瞬間です。

さて、今回私は一人旅。同じキャンプ場に8泊します。このような旅をしている人は思いの外たくさんいるものでして、毎日キャンプ場で顔を合わせているうちに仲良くなり、だんだんと小さなコミュニティができあがってきます。特に一人旅同士はすぐに仲良くなります。昼間は各自思い思いのところに出かけていますが、夕方になるとみなキャンプ場に戻り、酒を飲みながらお互いの身の上を語り合ったりします。

私も毎日、晴れた日はバイクで出かけて観光と蔵巡り、雨が降ったらキャンプ場のあずま屋で持参した分厚い本を読みふける、と晴耕雨読な生活をしておりました。夕方になったら銭湯に行き、帰りがけに商店街で晩ご飯の材料を仕入れ、ビールを買って帰ります。そして、晩ご飯を一人分支度してから酒を持ってコミュニティに加わり、くだらない話をしながらダラダラと飲み食いしていたのでした。

晴れた日は東シナ海に落ちる夕陽を眺めながら食事します。なんと旅情を感じることでしょう。こんな時、夏の南仏の午後9時、斜めの光線を浴びながらテラス席で食事するのと同じ高揚感を感じるのは私だけでしょうか。

他の人から見れば私はちょっと変わり者なのでしょう。毎朝バイクで出かけていったかと思えば、夕方焼酎の小瓶を積んで帰ってきて、夜は試飲してなにやらメモを書いているようです。試飲した残りを他の人に振る舞い、焼酎やワインの質問に答えているうちに、私はキャンプ場でもいつのまにか「山崎先生」と呼ばれるようになっていたのでした。。。

(終わり)